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シンガーにとっては、声帯はもちろんの事、発声に必要な空気の流出を行う呼吸器や、その運動を支えているあらゆる筋肉群、言い換えれば自分の身体そのものが楽器です。ヴォイストレーニングは、のどに集中しがちな発声の力感を身体でバランスよく支えられるように矯正する事で、声の響きを取り戻し、のどの緊張を和らげ、気持ちの入った歌を実現してくれます。
最も基本的な腹式呼吸
本当に初歩の初歩の部分です。では、イスに座って始めましょう。肩の力を抜き、一度上体をくずしてから胸を高く持ち上げ保持します。胸を張る必要はありません。かえって張りすぎる方に注意した方が良いでしょう。立つ座るに関わらず良い姿勢というものを勘違いしている人はとても多いのです。
まず首をゆっくりまわして緊張を取り去りましょう。次に肩を前後にまわして上胸の緊張を取り去りましょう。頭はホンの少しうつむき加減にしましょう。パソコンに向かう機会の多い人は猫背になりやすい傾向にあるので要注意です。
それでは、おへその辺りに手のひらをあてて、ゆっくりとお腹の中に空気をためこむ様に吸います。お腹の中に風船があると想像して、そこに空気を送り込んで下さい。吐く時は単にゆるめるだけで良いです。この時点ではまだ、吐く事は練習には含まれていません。腹式呼吸はお腹を前に出すものだと考え、外に突き出そうとする人がよくいますがそれは間違いです。お腹の中に風船をイメージするにしても、あまりお腹の表面ではなく中の方にそれを感じて下さい。お腹にあてた手がゆっくりと浮き沈みするようになると良いのですが、どうでしょうか。この時点で横隔膜を意識する事は勧められません。トレーナーでも横隔膜の位置を勘違いしている人がいますが、本来の横隔膜の位置は初歩的な腹式呼吸の助けにはなりません。ある程度トレーニングの経験を積めば、横隔膜を意識する事は発声の大きな助けになりますが、初心者にとっては少しの勘違いで大きな緊張を生むデメリットもあるのです。
鼻呼吸が良いのか、口呼吸が良いのか、よく質問を受けますが、この時点ではなるべく鼻呼吸を勧めます。中級者以上になれば、口呼吸も上手に利用出来ます。
ここで紹介したような腹式呼吸は、そのままでは歌に大きな影響を与える力はありません。本格的な練習に入る前に身体を慣らす程度の準備運動に過ぎません。しかし、どんなに難しく高度な練習もすべてはここから始まります。このレベルの呼吸法はとっくにクリアしているという人も油断は禁物です。これは初歩の初歩です。呼吸法も発声法もこの段階では想像もつかないような課題がまだまだ沢山あります。