3オクターブをどうすれば楽々と発声できるか?答えは意外と身近な声にあります。
3オクターブを発声する地盤は地声
3オクターブに必要なのは、まず低音域でキリっとした鳴りの良い地声を確立することです。
その声帯の閉鎖力がハイトーンの音域を伸ばす時にも必要になります。高音(裏声)の限界が高い事は3オクターブを歌うのに必要ですが、その高音の発声には声帯をタイトに閉じる事が必要です。
声帯にしっかりした閉鎖力が備われば、通常は音質が甘くなりがちな裏声の音域もタイトな声質で歌えます。タイトな裏声とは通称ヘッドボイスと呼ばれます。いわゆるファルセットとは異なる発声です。
ヘッドボイスを持つ事で高音域の限界はどんどん伸ばせます。息の抜けた甘い裏声はすぐに限界に突き当たります。
高音域を伸ばすヘッドボイス
ヘッドボイスについてはQ&A1「ミックスボイスの出し方を知る5つのヒント」のいくつかの回答で詳しく説明しております。よろしければ参照下さい。ヘッドボイスは声帯の使い方も音域も地声とは全然違いますが、声帯をしっかり閉じるという点においては地声と同じ能力が求められます。
まず音のクオリティーとして、声帯の閉じ方がゆるい半端な声では、それが地声であっても裏声であっても地に足のついた音楽表現は出来ません。
表現方法のバリエーションとして、あえて息のもれた甘い声を使う事もあります。
3オクターブは欲張りなのか
音域が広いに越したことはありません。それは確かです。音域が狭くて困ることはあっても、広くて困ることはないのです。
しかし3オクターブに憧れる人を批判する人達もいます。そういう人達はよく「正しい発声で2オクターブ出すことの方が大切だ」と言います。2オクターブも満足に歌えないで、3オクターブを目指すなんて欲張りだと言うのでしょう。
一番多く使うであろうメインの音域をまずしっかり歌えなくてはいけない、という考え方は確かに正論です。
しかし、ボーカリストが無欲な哲人である必要はありません。3オクターブに憧れ、求める人に対して、他人がとやかく言う権利もありません。人が好きなものには必ず正当な理由があります。もちろんその理由を、言葉で他人に説明する義務もありません。そもそも人がなぜ音楽を好きかという理由が、言葉などで説明出来ません。
好きなものには情熱を傾け、とことん挑戦すれば良いと思います。協力を求められれば私達も協力を惜しみません。
広い声域を誇るプロの歌手たち
音域の広さが素晴らしい持ち味となっているプロ歌手もいます。
彼等は非常に魅力的です。ただ、一流の歌手たちは音域だけでなく、音楽の持つ他の面、例えば楽曲の素晴らしさや、表現力、感情の素晴らしさなども充分に持っています。
そうした素晴らしさよりも、表面的なきらびやかさに憧れて音域を広げたがる人もいるでしょう。
多くの指導者の指摘と同じように、私たちもそれが良い傾向とは思いません。にもかかわらず、冒頭からいきなり大ヒントを解説している理由は、3オクターブという音域は多くの人達が思うほど特別なものではないからです。
実は簡単に出せる3オクターブ
元々3オクターブ程度の音域なら、正しいメニューで基礎練習をしていればそのくらい勝手に広がってしまうのです。一般のボイストレーニングでは珍しいかも知れませんが、本校では普通にレッスンしていれば自然と手に入る音域です。
2オクターブであろうが3オクターブであろうが、声域は基本テクニック。声はただの道具です。サッサと手に入れて、音楽センスを磨きましょう
一流歌手たちが伝えてくれる音楽の持つ豊富な魅力、楽曲の素晴らしさ、表現力、感情の素晴らしさに触れて、音楽センスやボーカルセンスを磨いて下さい。
それがあってこそ声という道具も光り輝き、人の心に感動を与えます。